
キャンプを体験した子どもたち、子どもたちと一緒に過ごしたボランティア、子どもたちを送り出した保護者。それぞれの経験と、想いを紹介します。

ボランティアリーダー

城下 日向子さん/大学2年生(インタビュー時)
2023・2024年 学生ボランティア。大学では心理学を専攻。1年目は高校生を、2年目は中学生くらいの年齢の子どもたちのグループを担当。参加のきっかけは大学の先生からの紹介。

きっかけは「何か始めたい!」という気持ち
このキャンプを知ったのは、大学の先生からの紹介がきっかけでした。当時、大学に入ったばかりでサークルもバイトもしていなくて、「何か新しいことを始めたい!」と思っていたんです。将来子どもと関わるような仕事に就くことも考えていたので、キャンプの案内を見て、「やってみよう!」と参加を決めました。キャンプには、小さい頃によく連れて行ってもらっていたので、「カヌーとかもできて楽しそう!」と思ったことも参加のきっかけの一つです。
初めてのキャンプ、そして見えた子どもたちの成長
去年、初めてキャンプに参加したときは、高校生のグループを担当しました。私と年齢がほとんど変わらない子たちで、リーダーという立場に正直ドキドキしていました。でも、初日は緊張していた子たちが、だんだん仲良くなって、お互いに自然に声をかけ合う姿を見たとき、本当に驚きましたし、感動しました。子どもたちが成長していく様子や、気持ちの面で変化が見られることが、このキャンプの素晴らしさだと思います。
コミュニティーのあたたかさ
ここにいる人たちは、みんな支え合いながら活動していて、すごく話しやすいし、多様な考えを持つ人が集まっています。学生もいれば、社会人もいて、それぞれの経験や考えを知ることができる。そんな新しい視点を得られることが、私自身を豊かにしてくれていると感じました。今年は2回目の参加ですが、新しく来るボランティアリーダーが多いので、私がそういう人たちの不安を和らげることができたらいいなと思っています。実際に新しくきた、いろんな人に話しかけたり、話を聞いたりしてみたのですが、みんなそれぞれの思いを持って参加していて、「やっぱり楽しいな」と改めて思いました。
誰もが楽しめる場所づくりをめざして
今年は中学生くらいの年齢のグループのリーダーを担当しています。4泊5日の中でどんなプログラムをやろうか、今いろいろと考えているところです。星空観察や水遊びもいいなと思うけれど、子どもたち一人ひとりの体の特性によって、できることや楽しみ方が違うから、みんなが無理なく参加できる方法を工夫したいと思っています。たとえば水鉄砲一つとっても、腕に力が必要だったり、持ち方を変える必要があったりする。そんなとき、どうすれば一緒に楽しめるかを考えるのも、大切な役割だと感じています。大学では障害について専門的に学んでいるわけではないけれど、キャンプでのレクチャーや介助練習を通じて、少しずつ知識や自信がついてきました。キャンプで過ごす時間は、自分の視野を広げ、誰かの思いに寄り添う力を育ててくれる場です。ここで得た経験は、これからの私にとってきっと大きな糧になると信じています。

参加者(高校生)

溝田 鈴さん(写真 右から2人目)/高校3年生(インタビュー時)
2019年に中学1年生で初めて参加して以降、高校3年生まで計4回参加。キャンプで仲良くなった友達とは今でもつながりが続いている。

参加のきっかけ
私がフレンドシップキャンプに参加したのは中学1年生の夏。母が特別支援学校の先生をしていて、障がいのある人との関わりを昔から身近に感じていたので、いつか自分もと思っていました。そんな時に、父の知り合いからこのキャンプを紹介してもらって、「なんだか面白そうだし、新しいことに挑戦してみたいな」と軽い気持ちで申し込みました。初めてのキャンプは想像以上に楽しくて、気づけば「来年も絶対に参加したい」と思っていました。学校や家では出会えない「はじめまして」の人たちと一緒にご飯を食べたり、遊んだり、寝たりする。その集団生活の中は新鮮な刺激がありましたし、発見も多かったのを覚えています。
キャンプで出会った大切な友達
キャンプで出会って、今でもずっと仲のいい友達がいます。同い年の女の子で、キャンプ中にたくさん一緒に遊んだり、話したりして自然と仲良くなりました。いまでも大切な友達です。その子は「手足の不自由な子」としてキャンプに参加していたのですが、ご飯を食べる時、その子が特別な道具を使っていたんです。それを見たとき、「この子にはこういうやり方があるんだ」と思いました。でも、それは「障がいがあるからこうなんだ」と感じたというより、「ああ、こういう食べ方をしてる子なんだな」という、すごく自然な気づきでした。友達のことを一つ知れた、そんな嬉しい感覚でした。朝から晩まで同じグループで一緒に過ごすからこそ、そういう小さなことに気づけるし、相手のことを深く知っていけるんだと思います。キャンプって、そういう場所なんだなって実感しました。
キャンプに流れる優しい空気が勇気をくれる
このキャンプには、ひとりひとりの考え方や特徴を否定せずに受け止め合う空気があります。自分の「できること/できないこと」や「得意なこと/苦手なこと」は、障害の有無に関係なくあると思うんです。同じグループになったら、同じスタートラインに立った状態で、そういう個人の特徴を感じながら過ごす。その中で自分の知らない世界や価値観にたくさん触れることができました。大学生のリーダーの話を聞くのもすごく面白くて、視野を広げてもらいました。
私自身、このキャンプに参加してから、自分から「まず話しかけてみよう」と思えるようになりました。自分から誰かとつながることに前向きになれたのは、大きな変化だと思います。
何よりも、ここで出会えた友達とのつながりが、私の宝物です。誰かと過ごす時間の中で、相手を知り、自分を知り、少しずつ成長できる――そんな経験ができるのが、フレンドシップキャンプのいちばんの魅力です。

保護者

若杉 みどりさん/保護者(上下写真:中学生の長男のグループ・高校生の長女)
高校生の長女(車椅子を利用)、中学生の長男、小学生の次女がキャンプに参加。長女は小学5年生からこれまでに4回経験。子どもたち全員にとって、キャンプは毎年楽しみにしている特別な時間。

親として、3人の子どもをキャンプに送り出して
わが家には、車椅子を利用する長女と、健常の弟と妹がいます。3人ともこれまでフレンドシップキャンプに参加してきましたが、このキャンプは子どもたちにとってとても大切な場になっています。出会えてよかったと感じています。
普段、障害のある子は家族以外の人と会話する機会が少なく、あっても大人とのやりとりが中心になりがちです。でもキャンプでは、同年代の仲間と自然に言葉を交わし、日常の何気ない会話を通して笑い合う時間がたくさんあります。そういったやりとりを通じて会話力が伸びたり、新しい知識や気づきにつながったりしたようで、親として嬉しく感じました。
いわゆる「きょうだい児」である弟と妹にとっても、自分と似た境遇の子に出会えることには大きな意味があると思います。親には言いづらい気持ちや我慢していることがあっても、同じような立場の友達とだからこそ話せることがあるのではないかと。そんな関係ができていくことが、これからの支えになっていくんじゃないかと思っています。
自分でやる、誰かと助け合う——生活の力を育む場
キャンプでは、生活の中で「自分でやらなきゃ」という環境が自然と生まれます。服を畳んだり、荷物を管理したり、寝る前の支度をしたり。家では親が手を出してしまいがちなことも、キャンプでは子ども自身がやっていますよね。最初は不安や戸惑いもあるかもしれませんが、周りの子を見て真似したり、自分なりに工夫したりしながら、少しずつ「生活をするために必要な力」を身につけていくのだと思います。その過程こそが、大きな成長の一歩なんだと思います。キャンプ中は「勉強をしなさい」と言われることはありません。でも、子どもたちは確かに多くのことを学んで家に帰ってきます。
家でも学校でもない、“第3の場所”で広がる世界
子どもにとってキャンプは、“第3の場所”です。家でも学校でも見せない表情や自分らしい個性が引き出されて、子どもたち自身も新しい自分を発見できる場になっていると感じます。友達と一緒にごはんを食べたり、自然の中で遊んだり。そういう時間の中で見られる表情は、家ではなかなか見られないものばかりなのではないでしょうか。
部活やスマホ、ゲームから離れて、自然の中でのびのびと遊ぶ体験は、今の時代の子どもたちには本当に貴重で、心がほどけるような時間になると思います。そこでできた友達やボランティアリーダーと、帰ってからもつながり続けることもあります。そんな人との出会いや関係性が、キャンプ語の学びや成長にもつながっていくと実感しています。